REPORT

フィールドワークレポート
渋谷コース

渋谷コースは「まちに開かれたホテル」をコンセプトとし、新しい社会貢献のスタイル<ソーシャライジング>の発信拠点「TRUNK(HOTEL)(トランク ホテル)」と、レーザー加工機や3Dプリンターなど最先端の工作機械が設置されている「FabCafe(ファブカフェ)」を訪問。

TRUNK(HOTEL)は「まちに開かれたホテル」

渋谷コースのメンバーは8人。それぞれの島同士はなかなか一堂に会することがないとのことで、道中もそれぞれの会話に花が咲きます。地下鉄表参道駅で下車し、歩くこと10数分。街の喧騒から少しだけ離れた坂の途中にTRUNK(HOTEL)はありました。

迎えてくれたのは広報担当の大坂さん。応接室に通され、TRUNK(HOTEL)が発行している『SOCIALIZING journal』というタブロイド紙をいただき、早速4人ずつの2班に分かれて館内をご案内頂きました。

TRUNK(HOTEL)のコンセプトは「まちに開かれたホテル」。「地域の方が普段使いできるようなホテルでありたい」と大坂さんは話します。客室は15室。2〜4階が客室で、その上階がチャペルになっています。

宿泊客と来訪者が自然に混じり合う場

宿泊者以外も利用可能なラウンジは、デスクやフリーWi-Fi、電源コンセントが完備。この日はノマドワーカーらしき利用者がパソコン作業をしていたり、ミーティングを行ったりしていました。

「TRUNK(HOTEL)は社会とのつながりを持つということを大切にしています。それは、環境へ配慮する・文化を大事にする・健康的な生活を送る・多様性を大事にするということ」という説明を受け、ラウンジのバースペースに向かった参加者は、日本家屋の古材をリサイクルした壁、抜栓され不要になったコルク栓を回収し再資源化する『東京コルクプロジェクト』から生まれたスツールを目にし、TRUNK(HOTEL)の理念の一部に触れることができました。

参加者たちは、スツールの感触を確かめながら、その徹底した姿勢に感心して説明に聞き入っていました。また、バーでは少量生産のジンやリキュールを出しており、そこでは小笠原のラムの取扱いも。「海外から来るお客様に東京ローカルの良さを知ってもらう取組をしている」という「ローカル優先主義」もTRUNK(HOTEL)の特徴です。

放置自転車のパーツを使って作ったレンタサイクル

続いてテラスに案内されると、大きなケヤキの木が存在感を示していました。
「ここは元々駐車場でした。このケヤキはわざわざ栃木から14mの大木を持ってきたものです。ケヤキは渋谷の木。落葉するので四季を感じてもらえます。渋谷にはなかなか一息つける場所が無いので、このテラスは公園のような場所になるように開放しています」(大坂さん)

確かにテラスにはお弁当を食べたりドリンクを飲んだり、気軽にこの場所を使っている方々の姿が何組もありました。

宿泊客が無料で使えるレンタサイクルは全部で約10台、放置自転車のパーツを再利用して作った自転車のため、すべて風合いが違います。「放置自転車は社会問題にもなっているので、ちょっとしたソリューションに。そのため1台1台違うんです」と話す大坂さん。

取り扱うのは「ストーリーのある商品」

続いてテラスのすぐ隣にあるコンセプトショップへ。まず目に飛び込んでくるのは壁面に書かれた先述の5つのコンセプト。置かれた商品は普段使いができる品揃えで、マグカップはリサイクル陶器、グラスは廃校になった小学校の蛍光管から作られたもの。Tシャツはリサイクルコットンで環境へ配慮したもの。ショップに置かれたファッションアイテムやお土産はすべてストーリーがあり、ソーシャライジングを身近に体験することができます。

「こちらは久留米のムーンスターというスニーカー。足袋メーカーで足袋づくり技術でスニーカーを作っていて、コンバースオールスターの原型。ここはこのように国産のものを応援しているショップです。お弁当やサンドイッチは地域の方に日常で使ってもらうために並べていて、これらも渋谷区の店舗のものを仕入れて使っています」(大坂さん)

「国産オーガニックなど、いいものを取り扱うと利益を出すのは難しくないですか?」という参加者からの問いに大坂さんは「赤字ではないけどギリギリです(笑)。ホテルのコンセプトを知ってもらうためにショップは大事だと思ってやっています。収益はイベントやウェディングで立てていて、ショップはファンづくりと捉えています」と答えました。

ブライダル大手の株式会社テイクアンドギヴ・ニーズが運営するTRUNK(HOTEL)は、チャペルがあり結婚式を行うこともできます。また、イベントスペースではコンサートやヨガイベントなど様々なイベントが行われています。

質疑応答では「マニュアルがない」に驚き

応接室に戻り、質疑応答タイム。参加者からの「客層は?」「宿泊客の平均的な滞在期間は?」「ユニフォームはない?」といった質問に対して、「お客様の8割が外国人で、その8割が欧米人です。滞在期間は人によりますね。ファミリーも高齢の夫婦もいるし様々。キッチン付きの部屋もあるので、子どものいるファミリー層の利用もあります。ユニフォームはないのですが、そもそもここではマニュアル自体がなく、各人がお客様にいいものをと考えてサービスを提供しています。グッドテイストであるものであれば服装もどんなものでもOK。オーナシップとクリエイティビティが就業指針で350人くらいのスタッフが働いている」とのことでした。特にマニュアルがないということには、どの参加者も驚いていました。

最先端の工作機械が並ぶFabCafe

TRUNK(HOTEL)でランチをいただき、一行は渋谷のFabCafe(ファブカフェ)に移動。一見、普通のカフェにしか見えませんが、中に入るとレーザー加工機や3Dプリンターなど最先端の工作機械がいくつもあります。

案内してくれたのはMTRL プロデューサー小原さん。「FabCafeはコーヒーを飲む感覚でモノづくりを楽しむカフェ。気軽に表札を作ったり、ベニヤ板に彫刻したりもできます。自分の小さなお店をやっている人やフリーで活動しているクリエイターなどが主に利用しています」と、工作機器を紹介してくれました。

少量から作ることができるので、オリジナルデザインで100個くらいの量を作りたいときとかは工場に発注するより安上がりで、便利に使えるとのこと。

「クリエイターだけでなく、誰でもキーチャームにオリジナルのメッセージ「お父さんありがとう」とかを刻み込んだり、UVプリンターで、iPhoneで撮った写真をアクリルにしたり。手ぶらで来てちょっとしたオリジナルのモノを作ることもできます」(小原さん)

お話を聞いていると少し敷居が高く感じてしまいますが、カフェとしてコーヒーを飲むためだけに使っても問題ないとのこと。ここはモノづくりに特化した場所というよりは、そのきっかけづくりとして、カフェという敷居の低い場所にしているそうです。

ものづくりから、コミュニティが生まれる

2階に案内されると、そこはコワーキングスペース。1階のカフェよりもさらに工作機械が数多く並び、モノづくりに打ち込む人たちも多くいました。

「ここは新しいモノづくりのテーマに取り組む場所。素材からモノづくりを捉え直すという意味で場所の名前は『マテリアル(素材)』で、3年前にオープンしました」(小原さん)

誰でも気軽に使ってもらえるよう、工具類は収納せず壁にかけられています。小原さんは、コワーキングスペースができてから、この場所がコミュニティの場としても機能し始めたことを動画をつかって説明してくれました。

FabCafeは工作機械が充実しているのですが、それだけではなかなか何を作ったらいいか、何に使えるのか、分からない人も多くいるそう。そうした人たちのために、「どうやったら楽しく3Dプリンターやレーザーカッターを使えるか」をまず伝えるために、とある大会を開いたと言います。

それが、「ファブミニ四駆カップ」というミニ四駆の大会です。3Dプリンターやレーザーカッターを使って参加者がミニ四駆を格好良くカスタマイズすると、誰もが自慢気にマシンを披露するように。もちろんレースも盛り上がったそうです。

「ファブミニ四駆カップはFabCafeのコミュニティの象徴。作りたい人が集まってコミュニティができ、大会運営メンバーに大手自動車メーカーのカーデザイナーが参加するようになりました。徐々に『FabCafeみたいな場所を作りたい』という相談を受けるようにもなって、少しずつプロデュースも始めています」(小原さん)

参加者はカフェに別の機能を組み合わせることによって、そこに人が集まってくるということ、それによって場所の価値を上げていく、という話に感心して耳を傾けていました。

レーザー加工機を実際に体験!

そして、最後にFabCafeからサプライズが。レーザー加工機を使って「東京宝島」と文字を入れたマカロンを参加メンバーへプレゼント!レーザーが動く様子に参加者も興味津々。マカロンは3個入りで1,500円。「これなら気軽なお土産に使えそう」と、参加者も満足気でした。

コンセプトの徹底や、運営等に携わる人やそこに集う仲間の大切さ、ワクワク感などを身をもって体験した渋谷コース。「島の人の優しさやおもてなし、島への憧れ感や非日常的なワクワク感は通ずるところがある」という共通点を見い出し、これからの各島のブランディングに向けてヒントを得たようでした。