REPORT

スタディツアーレポート
Fコース(三宅島、父島)

Fコースは、谷中のまち全体を一つの大きなホテルに見立てた地域一体型ホテル「hanare(ハナレ)」と、ランドリーと喫茶スペースなどが融合した「喫茶ランドリー」、徳島県の魅力をPRするアンテナショップ兼宿泊施設の「ターンテーブル」を訪問しました。

谷中エリアが一体となる、新しいホテル「hanare」

参加者が最初に訪れたのは、東京観光でも屈指の人気を誇る谷中エリアの「hanare」。まず、レセプションがある施設「HAGISO(ハギソウ)」へ。「HAGISO」は、まち全体を一つのホテルに見立てた「hanare」の一角、ホテルへの入り口に過ぎません。ここが起点となり、谷中に詳しいコンシェルジュがエリア内に点在する各施設を案内します。

「hanare」の他にも、料理教室やメイク講座など、まちの人たちが気軽に学べ、 先生たちが自分なりに教えることができる「まちの教室 KLASS(クラス)」、お惣菜などが買える「TAYORI(タヨリ)」、ハンバーガーが絶品の「Rainbow Kitchen(レインボーキッチン)」の他、お土産が買える雑貨店や銭湯などが点在しています。通常のホテルは食事や入浴などすべてが館内で完結しますが、「hanare」はまち全体がホテルのような役割を果たす設計がなされています。

スタッフの案内で、宿泊棟の外観を見ながら「hanare」や「HAGISO」、「まちの教室 KLASS」を見学し、これらの施設の企画運営を担う設計事務所、「株式会社HAGI STUDIO(ハギスタジオ)」の田坂創一氏から、事業設立の経緯、事業内容の説明を受けました。

元寺院経営の下宿「萩荘」をリノベーションし、カフェやギャラリーを併せ持つ"最小文化複合施設"として、2013年に「HAGISO」の運営をスタート。先に見学したどの施設も元々まちにあった場を活用した形で、大家さんやオーナーさんとの関わりをはじめ、実際の取組、成果など、一つひとつ興味深いお話を語られました。

「hanare」のスタッフが心掛けているのは、まちぐるみで宿泊客をもてなすこと。また、「TAYORI(タヨリ)」では、利用客から生産者や調理した人にメッセージを送ることができ、谷中の地を舞台とした、新たな出会いが生まれています。

参加者からは、感心の声と共に「地域を巻き込む仕組みや、出会いの創出など、狙わずに成功させているところがすごい」という声が挙がり、独自のコンセプトや宿泊スタイルが興味を惹いていました。

喫茶店+ランドリーが新たな可能性を創出

次に一行が向かったのは、東京都墨田区千歳の「喫茶ランドリー」です。名前の通り、喫茶店とランドリーの機能を持つお店で、55年の歴史を持つ手袋の梱包作業場の1階と地下部分をリノベーションした建物が印象的です。

最寄りの森下駅周辺は住宅街で、昔から戸建てに住む高齢者が多い状況でした。その後、マンションが増えて、若い単身者や赤ちゃんがいるようなファミリー世代が増加したものの、まちには飲食店などがなく、賑わいがなかったため、喫茶店オープンの構想が立ち上がったそうです。

参考にしたのは、デンマーク・コペンハーゲンで見た、赤ちゃん連れでも洗濯しながら喫茶店でホッと一息つける「ランドリー × カフェ」の業態。コインラインドリーに置く高額な洗濯機の価格に悩まされたものの、セミプロ仕様の最新機器を3台導入し、家事室をイメージしたワークスペースを設置。開業後は、通常のコインランドリーと比べて単身女性の利用者も多く、「洗濯物を見ていてあげるよ」と声を掛け合って買い物に行くなど、利用者同士のコミュニケーションも自然発生的に生まれ、喫茶ランドリーは森下の地に根付いていったそうです。

喫茶ランドリーを開業し、その後地域に根付いていくまでの紆余曲折の歴史が参加者の関心の的でした。

喫茶ランドリーが目指すのは、0歳から100歳まですべての人に来てもらえるカフェ。色々なテイストやデザインの席をあえて用意することで、「すべての年代の人にとって居心地がいい空間」が生まれるという喫茶ランドリー流のこだわりであるようです。

2ヶ所の視察を終え、土地に根ざす場所づくりの勘所を学んだ参加者。その土地の特徴を活かす足がかりを掴んだようでした。

渋谷から徳島の魅力を発信する「ターンテーブル」へ

2日目には、渋谷「ターンテーブル」へ。駅周辺の賑やかさとは一味違う大人な雰囲気が漂う渋谷・神泉エリアに「ターンテーブル」はあります。

到着後は「ターンテーブル」内のレストラン・バル・マルシェを運営する株式会社ターンテーブルの河野さんより施設について説明を受けました。

「ターンテーブル」は一般的なアンテナショップとは異なり、徳島を全面的にアピールしないスタイル。徳島産の素材・伝統・文化など徳島にまつわる要素を存分に活用した空間・サービスを提供することで、利用客に徳島の魅力を体感いただき興味を持ってもらうという運営側のスタンスが語られました。

レストランの食材から店内の装飾までいたる所に徳島産を使用しているものの、店側が言わなければ利用客には分からない程度のさりげなさ。興味を持った人にだけ説明することを徹底しています。これらの仕掛けは徳島の魅力を体感した人にSNSなどで情報発信してもらうことが狙いとのことで、徳島への興味やイメージが自然な形で拡散されることを目指しているそうです。

インテリアから野菜まで、徳島産への徹底

施設内は徳島の藍染染料"すくも"の暖簾、2階レストランフロアの床やテーブル(徳島県神山町の木材)、調理場の薪火で使われている薪など、徳島産を使うことを徹底。参加者は実際に触ってみたり写真撮影をしたりと内装やインテリアに興味津々でした。

レストランのおすすめメニューはサラダと薪火を使ったグリル料理。自家栽培の農地や直接契約をしている農家による徳島からの直送野菜を使用しているそう。視察している最中にもキッチンではシェフが料理をしている様子が見えました。

月に1〜2度、徳島県に馴染みあるものをテーマにしたイベントも実施。1階のスペースで阿波おどりが開催されたことも。土地柄、外国人の方が半分程で県外の人も来るそうです。参加者から集客方法について聞かれると「主にWEBを活用している」と回答されていました。

シングルはいつも満室、市場価格と照らし合わせ客室の値下げも

今度はホステルについて、2階の受付・3〜5階の客室を案内いただきながら株式会社R.project Turn Table Hostel(アールプロジェクト ターンテーブルホステル) マネージャーの岩本 雄也 氏より説明を受けます。

客室はドミトリー、シングル、ツイン、スイートの4種類で一番人気のシングルはいつも満室。1泊6万円のスイートルームは最大10人まで宿泊可能で合宿や同窓会や結婚式の二次会などにも使われているそうです。過去には一部屋16,000〜20,000円だったツイン料金を、ユースホステル客の増加を踏まえ値下げした経緯があるなど価格戦略についてもお話いただきました。宿泊客はカップルから女子旅の2人組やファミリーなど様々。

ホステルにもいたるところに徳島の要素が盛り込まれており、ランプシェードや各所の飾りなども徳島の伝統的な工芸品アートが使われています。シャンプーやボディシャンプーなどのアメニティは、徳島の「マンデームーン」のオーガニック商品。受付のカウンターも石材として有名な徳島県の青石でできており、この石に含まれるミネラルが徳島の野菜を美味しくしているそう。これらはレストランと同じく徳島県産であることは大きくアピールしていません。

2階、4階の壁は徳島の藍染染料"すくも"を表したグレー、ドアとカーペットは特産物の人参をイメージしたオレンジ、クッションはすだちの緑、柚子の黄色を表現しています。廊下のベンチは徳島県神山町産の木材で、ベッドに掛かるフットスロー(※1)は藍染の阿波しじら織り(※2)。どれを指しても「これも徳島の……」と説明いただき、参加者は、店舗の徹底ぶりに驚いている様子でした。終始「おしゃれ」「おいしい」という声が繰り返し聞かれ一同刺激になったようです。最後には徳島県産のコスメブランド「マンデームーン」のグッズを参加者全員にプレゼントしていただき視察が終了。全員で施設を後にしました。

(※1)ベッドのカバーの上、足元部分に横にかけられている細長い布のこと。
(※2)徳島県徳島市で生産される布面に独特の縮みのある綿織物。